信用金庫法の特定関係者に該当するための要件

◯事案の概要

信用金庫の株を10%所有しており、元職員が代表取締を務めている法人について、信用金庫法の特定関係者に該当するか。

◯相談内容

私が関与しているA信用金庫から相談があり、B法人が信用金庫からみて、信用金庫法の「特定関係者」に該当するのかどうかについて意見を求められています。

「特定関係者」に該当する場合には、金融庁に対してA信用金庫からの説明が必要になります。これまで該当するかどうかを検討したことがなかったため、このたび意見を求められました。A信用金庫とB法人の間で、特に出資や取引状況は変わりません。

B法人は、A信用金庫が株式の10%を所有する株式会社で、A信用金庫を退職した元職員が代表取締役を務めており、その代表取締役はB法人の株式を約20%所有しています。「信用金庫法施行令(金庫の特定関係者)11条の2第3項」に関して、A信用金庫の元職員がB法人の代表取締役を務めていることから、「特定関係者」に該当するように考えております。

一方で、「信用金庫法施行規則(金庫の特定関係者)第120条」においては、「財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて法人等が子法人等以外の他の法人等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないことが明らかであると認められるときは、この限りでない。」との文言があり、特定関係者に該当しないという考え方もあります。

第120条の「影響を与えることができないことが明らか」ということを裏づけるためには、A信用金庫とB株式会社が行う取引において、通常の取引条件に比して不相応な条件がないことを確認していくだけでは不十分でしょうか。

◯菰田弁護士の回答

結論としては、「B法人の代表取締役(A信用金庫の元役員)に対して、A信用金庫自身がどの程度の影響力を及ぼすことができるか次第」となります。

確かに、信用金庫法施行令11条の2第3項で関連法人等が定義されており、要約すると「取締役その他これに準ずる役職にあった者の就任を通じて、財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる」ことが要件とされております。

このうち、今回は「取締役その他これに準ずる役職にあった者の就任」は認められるでしょうから、「財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる」かどうか次第となります。

この文章は、「財務及び営業又は事業の方針」の「決定」に対しての影響について書いてあります。つまり、B法人が事業に関して何らかの意思決定を行う際に、A信用金庫から元役員であるB法人社長に事実上の圧力を加えることで、B法人の意思決定をA信用金庫の意向に沿うように捻じ曲げることができるかどうかの問題です。

したがって、単に元役員が頑張って立ち上げた会社だから株を持っており、特段日常的な意思決定に口を出す立場にはなく、あくまでB法人の意思決定は社長や他の役員らが行っており、そこにA信用金庫の意向は介在していない、ということであれば、用件を満たさないため、特定関係者には該当しません。

なお、単純に客観的に見ると、A信用金庫は10%しか株を持っておらず、B法人の意思決定を捻じ曲げるだけの力は持っていないはずですから、形式論のみであれば、特定関係者には該当しないと考えます。

ここのA信用金庫と元役員個人との主従関係の強弱によると思いますので、そこをヒアリングされてみてください。