上場準備における未払い賃金対応のレベル感について

◯事案の概要

上場準備をしている顧問先が上場コンサルから未払い賃金の対応を求められているが、上場審査において必要とされる対応はどの程度のものなのか

◯相談内容

上場準備をしている顧問先があるのですが、その顧問先に上場コンサルとして入っている会社から、過去3年間の残業について、未払い賃金があれば対処するように求められているようです。

顧問先は日々のタイムカードの打刻通りではなく、各自から残業申請があった残業についてのみ、残業代を支払うという運用をしております。例えば、日々、残業という認識はなくとも5分、10分ぐらいは終業時刻を過ぎることはあるかとは思いますが、本人が残業申請をしなければ、残業代は支払われないことになっております。ただし、残業申請があった日については、タイムカードの打刻通り、1分単位で支払っております。

今回、労働者から訴えがあったわけでもなく、労基署に指摘されたわけでもないのですが、上場準備として未払い残業がないようにしなければならないという場合、どれぐらいの精度で支払いをする必要があるのでしょうか。上場コンサル会社からは、実務としてのアドバイスは無く、「未払い残業代の確認については、社労士とも相談の上、慎重に進めてください」と投げられている状況です。上場審査において必要な「未払い残業で訴えられるリスクがない状態」とは
どの程度のことを目指すべきなのでしょうか。

明らかに1時間、2時間と残業しているにもかかわらず、残業申請をしていないことから未払いになっているケースについては支払ったほうが良いと思うのですが、1時間に満たない日々の超過時間についてはどうするべきか悩んでおります。

顧問先は300人弱の会社ですので、塵も積もれば、で、タイムカードの打刻通りに支払うと莫大な金額になりそうです。また、コロナ禍で在宅勤務を奨励していた時期とも重なり、本人のタイムカード打刻がルーズになっているケースも散見され、過去3年にわたって、一人一人精査していくのは膨大な作業となります。顧問先人事部では、社員全員に過去3年のタイムカードのデータを渡し、本人に未申請の残業の有無を確認し、もし未申請分があれば申請してください、という運用を考えているようですが、そうすると、日々1分単位で請求して良いのか、などの問い合わせが殺到することが予想されます。

私個人の意見としましては、「明らかに残業しているのに残業申請をしていない人」、というのは、限定された人たちのようですので、例えば所定時刻を30分以上経過しているのに未申請になっている人など、一定の線引きをして、ある程度ピックアップして確認をしていくのが良いように思うのですが、いかがでしょうか?ただし、線引きをするにしても、どこで線引きをするのか(15分か、30分か、1時間か)は特に根拠がありませんので、不適切ということになるのでしょうか。

理想はタイムカードの打刻通りにすべての残業について支払うことでしょうが、そうすると今後の労務管理においても残業申請を廃止して、タイムカードの打刻通りに支払う運用に変える必要も出てくるかと思います。

「社労士のアドバイスに従って未払い残業の確認をしたのに、上場審査でアウトになった」となったら大変な責任問題ですので、顧問社労士の立場としてのアドバイスをどうすべきかも悩んでおります。「上場準備における」未払い残業の精算の実務(実態)が感覚的に分かりませんので、他社事例などがございましたら、ご紹介いただけますと助かります。

◯菰田弁護士の回答

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