解散する子会社の従業員は親会社で雇用しなければならないか?
◯事案の概要
親会社からの出向社員ではなく、直接契約する正社員の採用を考えているが、親会社が反対している
◯相談内容
C社(株式会社Aが66%を、株式会社Bが34%を出資している)社長からの相談です。
C社の社員は、現在、社長を含めてA、Bからの在籍出向社員で構成。しかし出向社員ではなくC社が「直接契約する正社員」の採用を考えていますが、親会社が断固として反対をしております。
理由としては、「C社の事業がうまくいかず、倒産や清算となった場合、親会社において子会社のC社の直接雇用の社員を面倒みないといけないから」というものでした。
そこで、解散する子会社の従業員は親会社で雇用しなければならないのかについてご相談です。
私の見解は「絶対に雇用しなければいけない」ではなく、「その努力はしましょうね」というものですが、私の見解に誤りがないかどうか、下記の文面を御確認いただけますでしょうか。
会社が解散する場合の労働者の解雇も「整理解雇」となりますので、以下の「整理解雇の4要素」を考慮する必要があります。
①人員削減の必要性
②解雇回避努力
③人選の妥当性
④労働者側との協議
特に、子会社を解散する場合、親会社にとっては①②③は問題にならないですが、④については、子会社で直接雇用をした労働者に対する責任が「全くない」とは言えません。
これは、親会社は子会社の株式を所有することで子会社の重要事項を決定したり、経営者を送り込んだり等、子会社の運営全般について大きな影響力と支配権を持っています。
つまり、親会社の子会社に対する支配のミスによって子会社が経営不振に陥ったり、多額の債務を抱えることになった、といえることもあるからです。
つまり、解散する子会社の従業員を親会社やグループ会社に転籍させることを、まずは検討する必要が、親会社には出てきます。
ただし、親会社にとっても引き受ける余地が無い、ということもあるかと思いますが、「検討もしない」「努力もしない」となると親会社としては、整理解雇の4要素の「解雇回避努力を尽くしていない」と見られる可能性があると考えます。
仮に、整理解雇・法人格否認のどちらにおいても問題がないとしたとしても、親会社が子会社を解散させる以上、その子会社の従業員の雇用を維持するべく、例えば他社への転籍同意を取り付けるなり、労働契約承継法を活用するなり、親会社としては最大限の“努力”を払う責務があると言えます。