吸収分割契約書に記載する権利義務について・非業業務執行取締役の責任限定契約の締結について

◯事案の概要

Aを吸収分割会社、Bを吸収分割承継会社として、甲事業をBに承継させる旨の吸収分割契約を締結する。甲事業に関して発生した他社への売掛金債権が相当あるが、当該売掛金債権はB社へは承継しない

◯相談内容

【吸収分割契約書に記載する権利義務について】

①今回、Aを吸収分割会社、Bを吸収分割承継会社として、甲事業をBに承継させる旨の吸収分割契約を締結いたします。

甲事業に関して発生した他社への売掛金債権が相当あるのですが、当該売掛金債権はB社へは承継しないことを検討しております。

会社法第2条29号によれば、会社分割は「その事業に関して有する権利義務の全部または一部」だと規定しており、事業それ自体の承継は要件でなくなったとあります。

しかしながら、「事業の承継」は要件であると考えている人もおり、判例学説も「会社分割は包括承継であり特定承継ではない」というようなことを言っております。

学問的な話はともかく、条文にあるように甲事業を分割事業としても、甲事業にかかるどの資産(あるいは負債)をBに承継させるかは、吸収分割当事者が契約書で決めればよいということは間違いないと思うのですが、その明細を現時点で吸収分割契約書に記載するのはなかなか困難です。

②甲事業に関連して承継する資産等が全部でなく一部であるような場合、承継する資産と負債はある程度包括的に記載し、逆に承継しない資産や負債を具体的に明示するとことでもよろしいのでしょうか?

【非業業務執行取締役の責任限定契約の締結について】

つぎのような責任限定契約の定めをしている会社があるのですが、未だ登記をしておりません。

(非業務執行取締役等との責任限定契約)
第〇条 当会社は、会社法第427条第1項の規定により、取締役(当会社又はその子会社の業務執行取締役又は支配人その他の使用人である者を除く。)との間に、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく責任の限度額は、同法第425条第1項が規定する額とする。

③上記の425条第1項の額というのは、この場合425条第1項が規定する最低責任限度額と解するべきなのでしょうか、それとも「賠償責任額から最低責任額を控除した額」のことを指しているのでしょうか?(上記規定は上場企業の定款でもよく見かけます)

当方は本規定は後者の意味で、「同法第425条第1項が規定する最低責任限度額とする。」と定めれば前者の意味かと考えているのですが。

④責任限定契約の締結は、定款変更、登記までしないと効力がないのではと法務担当者から言われました。

同様のことを記載している弁護士先生の記事も見かけたのですが、登記を責任限定契約締結の効力要件とする条文がどうしても見つかりません。(根拠がよくわかりません。)

定款変更は必須だと考えますが、登記前に責任限定契約を締結したとしてもその効力発生に影響はないと考えますが、本件について菰田先生のご意見をいただきたく思います。

◯菰田弁護士の回答

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い . あなたは会員ですか ? 会員について