法人が和解勧告に応じて金銭を支払う場合、取締役会の決議が必要か

◯事案の概要

訴訟中のクライアントに対し裁判所より和解勧告が出ている。もし仮に和解勧告に応じて取引先に金銭を支払う場合、取締役会の決議を経るべきか

◯相談内容

取締役会の決議に関してご相談させてください。

私のクライアントである会社と取引先との間で訴訟中なのですが、裁判所より和解勧告が出ております。もし仮に和解勧告に応じて取引先に金銭を支払う場合、取締役会の決議を経るべきでしょうか?

会社法の規定によれば、代表取締役は株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するとあります。(349条4項)

その一方で取締役会は、会社の業務執行の決定を行い、(362条2項1号)法令・定款により株主総会の決議事項とされた事項を除き、会社の業務執行すべてにつき決定する権限を有するとあります。(295条2項参考)

また、重要な財産の処分については取締役会の決議が必須とされております。(362条4項1号)

裁判上の和解に応じて金銭を支出することが、会社の業務の執行といえるかどうかについては、本来の会社業務の執行を正常化させるための関連する行為であるととらえれば、業務執行に準じるものと考えられるように思います。

また、『重要な財産の処分』に該当するかどうかという点で考えるに、裁判所は「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様および会社における従来の取扱い等を総合的に考慮して判断すべきものである。」(最判平成6年1月20日)と判事しております。

以上の事項に加えて、取締役会は代表取締役の業務執行を監督しているということを考えるに、和解に応じて金銭を支払う行為は重要な財産の処分に該当する可能性があり、私は取締役会の決議を要するものと考えますが、もし和解金の支払い決定に関して取締役会の決議は不要と考えるような根拠がございましたらご教授願いたく思います。

◯菰田弁護士の回答

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