就業規則が周知されていない場合の雇用契約書の効力について
◯事案の概要
就業規則を社内ネットの共有ファイルにアップし、各社員宛に自由に閲覧できる状態にしているが、ある支店の庶務担当者が「就業規則は(支店に)備え付けられていない」と誤った回答をしたため「就業規則が周知されていないので、雇用契約は無効である」という主張をされている
◯相談内容
この企業では、就業規則を社内ネットの共有ファイルにアップし、各社員宛に自由に閲覧できる状態です。ところが、ある支店において、共有ファイルにアップされていることを支店の庶務担当社員が知らず、入社からしばらく経過した社員から就業規則閲覧の求めに対し、「就業規則は(支店に)備え付けられていない」と誤った回答をされたことから当の社員とトラブルになってしまいました。
当の社員からは、
ア)就業規則が周知されていないので、雇用契約は無効である。
イ)雇用契約が無効であるので、変形制も当然無効。よって、これまでの12時間シフトの勤務については、法定労働時間の8時間を超えた4時間分について、就業開始時に遡って時間外労働として支払え
という主張がされています。
ご指導いただきたいのは、就業規則が周知されていない(本件では、周知が徹底されていなかった)場合において、
a)それをもって雇用契約そのものが無効となるのでしょうか。
b)無効となった場合、当人の主張するような判断となるのでしょうか。
私としては、労働契約時に合意がある以上、就業規則の周知がされていなかったことをもって雇用契約自体が無効とはならないと考えました。
労契法7条では、労働契約時に合理的な労働条件が定められている就業規則を周知していた場合は、就業規則の内容は労働条件となる(異なる内容を合意していた場合は別)とあります。これについて、規則が周知されていない状態で、雇用契約書に記載がなく、規則に定めている事項の履行を求めるのであれば、それは難しいと思います。
また、雇用契約が就業規則で定める基準を下回る場合は、その部分は無効で、就業規則の定めが適用となるものと思います。(労契法12条)ただ、この場合でも労契法6条でいう労使の合意まで否定され、無効になるとは考えられないと思います。
もし、無効ということであれば、錯誤など、本人の真意でなかったという事情が必要であると思いますが、いかがでしょうか。