兄弟への不動産売買が詐害行為と認定されるリスクについて

◯事案の概要

株式会社甲が乙銀行に対し、約1億円の債務を負っており、保証協会の保証料を一括で支払うことが難しい状況かつ保証協会の代位弁済がなされる可能性がある。甲の代表取締役Aは個人で所有する収益物件を守りたいと考えているが、Aが兄弟Cに対し、上記収益物件を売却した場合、Aにとって、詐害行為などと認定されるリスク及び司法書士としてこの売買に関わったときのリスクがあるか

◯相談内容

下記の件で相談です。

・株式会社甲が乙銀行に対し、約1億円の債務を負っている。
・甲の代表取締役A及び取締役B(前代表取締役)が上記債務の連帯保証人になっている。
・上記債務につき保証協会が保証人になっていて、毎年、保証料を支払い保証委託契約を更新している。
・上記保証料の一括での支払が厳しい状況で、かつ、保証協会の代位弁済がなされる可能性がある状況。
・上記債務につき、物的担保となっているのはBの個人資産のみ。
・Aが個人で所有する収益物件を守りたい。
・Aが兄弟Cに対し、上記収益物件を売却することを検討。

①Aにとって、詐害行為などと認定されるリスクはありますか?
主たる債務者がその有する不動産を売却することは詐害行為に該当するかと思いますが、連帯保証人であるAがその個人資産を売却することは直接的には詐害行為に該当しないと考えます。

ただ、主たる債務者である株式会社甲が現状、利息のみを何とか支払っているとのことですので、連帯保証人の財産処分の時的リミットをどう考えて良いか悩んでおります。

②この売買に伴う登記申請に携わる司法書士としてのリスクはありますか?
※課税上のリスクも検討すべきかとは思いますが、その点についてはAが「自身がそのリスクを負う。」とのことで、私としても深くはタッチしていないのが現状です。

上記①の質問と連動するかと思いますが、本件売買が詐害行為に該当するならば、売買に伴う登記申請に携わることは司法書士としてリスクがあると考えます。

また、仮に登記申請を進める場合、通常の売買契約であれば「所有権移転時期の特約」(契約締結日と残代金決済日が異なり、残代金決済日に所有権が移転する旨の条項)があることが多いかと思います(それに伴い、司法書士が作成する「登記原因証明情報」においても「所有権移転時期の特約」がある旨の内容を盛り込みます。)。

しかし本件売買の場合、Cの自己資金が売買代金全額を上回る可能性は低く、「所有権移転時期の特約」がある旨の内容を盛り込んだ「登記原因証明情報」を作成すると虚偽の「登記原因証明情報」を作成したことになります。

そこで、本件手続を進める場合は、Aが作成する売買契約書には「所有権移転時期の特約」を入れず、私が作成する「登記原因証明情報」についても「売買契約を締結した。→よって、所有権が移転した。」というシンプルなもので行くべきだと考えております。

③株式会社甲の状況につき弁護士に軽く相談したところ「経営者保証に関するガイドライン等を駆使して乙銀行と交渉していく余地があるかもしれない」とのことでした。なお、Aは遅かれ早かれ株式会社甲及び自身について破産申立が必要だと考えているようです。

◯菰田弁護士の回答

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