「商標権侵害行為」に関する通知書への初期の対応についてどのようにアドバイスできるか

◯事案の概要

店名が商標権を侵害しているとして、同業種の他店から商標権侵害行為に関する通知書が届いた。通知書の内容は、役務提供の停止と営業上の損害に関する賠償請求である。行政書士としては、どのようにクライアントにアドバイスをするべきか

◯相談内容

当事務所の顧問先の店舗に「商標権侵害行為」に関する通知書が相手方代理人弁護士から届きました。顧問弁護士は別にいますが、週末で弁護士と連絡が取れないということで私のところに連絡が来ました。週明けには顧問弁護士が対応されると思いますので、取り急ぎの対応をお伝えし、安心していただくということが私の役割かと考えています。

通知の概要は、顧問先が用いている「AB」という店名が相手方の保有する商標「B」を侵害しているという指摘から、役務提供の停止、営業上の損害に関する賠償請求です。損害は、営業開始日以降の「こちらの得た利益」と主張してきています。

商標番号の照会を行ったところ、確かに商標権を確認できました。私が見たところでは相手方の主張にかなり理由があると思われますが、損害の有無については議論の余地があると感じています。このような状況でどのような点を顧問先にお伝えすることができるでしょうか?

私が考えているのは、

  1. 通知書に対する回答期限を確認する(見たところ回答の期限はないようです)
  2. 早めに顧問弁護士と連絡を取る
  3. 顧問弁護士への相談前に該当店舗の休業などを行わない

行政書士である私ができることは非常に限られますが、顧問弁護士と連絡がとれる前にひとまず安心してもらう、という観点で何ができるかアドバイスいただければと思います。よろしくお願いいたします。

◯横須賀の回答

同区分で登録されているなら、差止め請求的なことは可能だと思いますが、おっしゃるとおり損害については何も確定したものがありません。

週末に届いたのですか?それなら弁護士が休みのときに狙ったのかもしれません。こういった請求で、1日2日ですぐ振り込むとかそういうことはまずなく、相手の弁護士もそれが本筋の狙いではないと思います。(普通に商標を変えさせたいだけかと)

なので、追加で連絡が来れば検討中と伝える程度で、何かしらのアクションは、明日弁護士と相談してからでとりあえずは問題ないと思います。顧問先には気は焦るかもしれませんが、

すぐに賠償金等の話にはなりませんので、今日は、明日弁護士とまずは協議しましょう、くらいの連絡で足りるとは思います。

◯菰田弁護士の回答

おっしゃるとおり、「商標権侵害に該当するか否か」と「該当するとして、損害賠償請求権が発生するか否か」は分けて考えなくてはなりません。そして、商標権侵害に該当するかどうかは、必ずしも商標との文言の同一性だけではなく、その商標の表示の仕方やお店の営業方法、種類など、様々な要素を加味して判断されます。

今回は、精緻に検討しないと何とも言えませんが、業種もほぼ同じようですので、系列店と判断されてもおかしくないでしょうから、商標権侵害と判断される可能性はそれなりにあると思います。

その上で、損害について相手方は、こちらが得た利益額と言っていますが、これは間違っていますね。こちらが利益を得ていても、相手方が損害を被っていなければ損害は存在しません。

ホームページで見る限り、同じ地域内に支店はなさそうですし、もしあったからといって、相手方の売り上げが変わるとは思えません。(因果関係が繋がりませんね)

だとすれば、商標権侵害が存在するとしても、相手方に損害は発生しておらず、商標権侵害で店名を使わない旨の差止めは認められても、損害賠償は認められないという結論になるのではないかなというのが私の感覚です。