代表取締役が会社から着服した金銭を株主が直接返還請求できるか
◯事案の概要
代表取締役が、仕入先と結託して水増し請求を行ない、会社名義の帳簿外の口座に水増し分を仕入先に振り込ませ、着服した。このことについて、株主との間で「着服分を株主に支払う」という内容の債務弁済契約を締結し、公正証書化する旨の同意がなされた。しかし、株主が着服分を代表取締役に直接請求する法的根拠がないと判断され、公正証書化できないとの指摘がなされた。この場合、どのような対応をとるべきか
◯相談内容
- A氏:X社の100%株主
- B氏:X社の代表取締役・代表清算人
- X社:清算結了済み
B氏はX社の仕入先と結託して水増し請求を行ない、X社名義の帳簿外の口座に水増し分を仕入先に振り込ませ、着服しました。本件発覚後、A氏とB氏の間で「着服分をB氏がA氏に支払う」という内容の債務弁済契約を締結し、公正証書化する旨の同意がなされています。
ここで公証人から、法律関係に問題があり、これでは公正証書の作成はできない旨の指摘がされました。株主であるA氏がB氏に直接請求する根拠がないと判断されたことが理由かと思います。
①この場合、
- A氏のX社に対する残余財産分配請求権を被保全債権として、X社のB氏に対する返還請求を代位行使するという形で債務弁済公正証書を作成する(債権者代位権が成立するかは疑問)
- X社の清算結了を抹消して再度清算会社に戻し、X社宛に返金させる旨の債務弁済公正証書を作成し、返金された金額を残余財産としA氏に分配する
のいずれかを考えていますが、お考えをお聞かせいただければと思います。ちなみに公正証書作成に当たり、私はA氏の代理人となる予定です。
②法務省の公証制度についてのホームページに以下の追記があります。
「どのような内容の契約でも,法令や公序良俗に反するなどの無効原因がなく,行為能力の制限による取消しの対象とならないかぎり,公証人は,公正証書の作成の嘱託を拒絶することは許されません。」
これに照らして、無効・取消原因がないことを主張すべきでしょうか。