退職理由と未払い残業代に関する会社と従業員間の紛争について

◯事案の概要

退職理由、および未払い残業代について会社と従業員が争っているが、①未払い残業代と従業員負担の社会保険料を相殺するという従業員からの申し出を拒否できるのか②会社からの団体交渉の拒否は認められるか③社員の申し出を受けて会社側が退職手続きを行ったが、裁判になったとき不利に働くか

◯相談内容

現在、退職理由及び未払い残業代について争っている会社があります。労働組合が介入しており、従業員は会社から退職勧奨をうけた、未払い残業代があると主張。会社は、退職勧奨はしておらず、未払い残業代もないと主張しています。

①数回の団交を終え、退職理由については分が悪いと組合側が判断したのか、新たに未払い残業代の請求をしてきました。文面には、未払い残業代と従業員負担の社会保険料を相殺すると書いてありました。

会社としては、退職勧奨をしていないので従業員としての身分が継続していると判断しているため、社会保険の喪失手続をとっていません。当職としては、たとえ裁判等になって会社側に未払い残業代の支払い命令が下ったとしても、社会保険料との相殺は拒否できるのではないかと考えております。相殺拒否の方法論は別として、相殺拒否はできうるのでしょうか?

②数回の団交から文書でのやり取りへ移行し、どちらも歩み寄りが見られないため、今後数ヶ月このような状態が続くものと見込まれます。会社としては、次回の文書に「このままでは平行線をたどるばかりであるから、団交及び文書のやり取りは一切行わない」との文言を入れ、団体交渉を拒否する意向です。

そこでご相談ですが、労働組合法7条に定められている「不当労働行為」には「正当な理由のない団体交渉の拒否の禁止」とありますが、この「拒否」にあたるためには、団交及び文書のやり取りの回数にボーダーラインが存在するのでしょうか?

私としては、「正当な理由」があれば回数は関係ないと考えております(もちろん、1回は団交なり文書なりで接触しないとダメでしょうけど)。また「平行線をたどるばかりであるから…」が「正当な理由」と認められるのかどうかについても、菰田先生のご意見をお伺いできれば幸いです。

③退職勧奨をうけたと主張する従業員から、退職勧奨に合意する旨の退職届が送付されてきました(会社としては退職勧奨をしていないので従業員へ返送しました)。

会社は、退職届に「退職勧奨に合意し、●月●日をもって退職します」と記載されていた事を理由として、●月●日に退職する意思があると判断し、その日をもって自己都合退職の手続を行う予定です。そこで菰田先生のご意見を頂きたいのですが、退職理由について裁判になった場合、会社が自己都合退職の手続を行った行為が、従業員側に有利に働く材料となり得るのでしょうか?

◯菰田弁護士の回答

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