相続の限定承認の起算点について
◯事案の概要
相続人の一部が相続放棄をし、次順位の相続人が現れたとき、相続の限定承認の起算点はどこになるのか
◯相談内容
Aが亡くなり、相続人は妻と長男と二男であるが、長男と二男が相続放棄をしてしまい、妻と次順位の兄弟B・Cの3人が相続となりました。(Aの直系尊属は全員既に死亡)
この場合の限定承認の期限は、兄弟B、C両方ともが相続人となったことを知った日から3ケ月以内と考えれば良いのでしょうか?なお、そうすると妻は3ヶ月を過ぎてしまいます。ちなみに、兄弟B・Cも相続放棄をする可能性があります。
◯菰田弁護士の回答
したがって、兄弟B・Cの熟慮期間は、「Aが死んだことを知った」かつ「自分が相続人であることを知った」日から起算します。そうなると、【長男と次男の相続放棄手続きが家庭裁判所で正式に受理されて完了したことを知った日】が、自分が相続人であることを知った日になります。
以上より、兄弟B・Cの熟慮期間は、「長男と次男の相続放棄手続きが完了したことを知った日」から起算することになります。
ここで問題は、そうなると妻の起算日と兄弟B・Cの起算日がずれることです。相続放棄に関しては個別にできるので、起算日がズレても問題なく、個別に熟慮期間中かどうかを判断すれば良いのですが、限定承認は全相続人で行わないといけないので、そういう訳にいきません。
そのため、限定承認の場合には、一番熟慮期間の起算日が遅い人に合わせて算定します。今回は、兄弟 B・Cのうち、長男と二男の相続放棄を知ったのが遅かった方の日付を起算日として、限定承認を考えることになりますね。
兄弟も相続放棄した場合には、妻が単独で限定承認することになりますが、妻は最初から相続人ですので、妻自身の熟慮期間は最初から進行しています。妻の熟慮期間が経過している場合、もう伸長申立はできません。そのため、その場合は妻1人ではもう限定承認はできません。
本来は、後で他の相続人が確定してから限定承認をする可能性が高いとして、熟慮期間の伸長申立をしておかなければならない事案です。事案によっては、熟慮期間経過後の相続放棄と同じく、例外的に認められる事案もあり得るので絶対ではありませんが、基本的に認められません。
なので、もし妻の熟慮期間が経過している場合は、BかCのように、熟慮期間がまだ経過していない相続人を巻き込んで限定承認するしかありませんね。今回は、兄弟B・Cが相続放棄をせずに、合わせて限定承認された方が良いと思いますよ。B・Cのどちらかが相続放棄することは構いません。
妻の熟慮期間が伸長できるのであれば、ひとまず伸長してから検討していただいた方がいいですね。そしてB・Cにどうやって協力してもらうかを検討されてみてください。