根拠に乏しい労災申請を主張する労働者への対応

◯事案の概要

会社側としては根拠に乏しいと思われる労災申請を主張する労働者への対応について相談したい

◯相談内容

労災申請を求める労働者に対する企業対応について、先生のご見解をお知らせください。

①2012年に営業事務の正社員(女性)として雇用契約を締結
②左肩関節周囲炎を事由として2023年7月11日から25日まで休暇取得。携帯端末や荷物を持って営業活動を行うに際して、それが痛みを伴うもの、という主張であり、医師の診断書においては肩の痛みを誘発する動作を可及的に避けることが望ましい、という内容に留まる。
③2023年8月、当該労働者が営業活動に際して、訪問は必ず現地に赴き直接話をすることが服務規律、営業活動ルールとなっていたところ、訪問していないにもかかわらず訪問したとして虚偽報告を行っていた(お客様の確認により発覚したもの)。なお、虚偽報告件数は把握していない。
④上記③に対して、会社は本人面談(担当役員等)を行ったうえ、譴責処分を行い、「始末書」と「反省文及び今後」を提出させた。また、この時「誓約書」として再度同様又は類似行為が発覚した場合、身分変更等の処分を受け容れるという内容を含めた書面を取り付けている。
⑤適応障害の診断書を会社に提出し、2023年8月14日から1カ月間の休職を命じた(健康保険の傷病手当金を受給)。
⑥2023年8月24日に会社産業医の面談を実施し、その際産業医より、フルタイム勤務可で残業無し、業務量8割程度なら復帰も良い、という見解を出した。しかし、会社は、それを認めず休職期間満了日まで休職させて、9月15日より復帰を命じた。
⑦その後、会社のエリア長等が当該労働者と話する中で、④の対応がパワハラであるとか、文句を言うようになっていた模様。
⑧2024年1月18日、当該労働者より適応障害の診断書が提出された。この時には、上記⑦に関しての主張がなされた模様。(ここから当職に相談された。)
⑨2024年2月5日、会社は私傷病に基づく休職命令を⑤の時と同様に行う予定でおり、書面を準備して、本人と面談を行ったが、その時にパワハラの主張だけを繰り返した様であり、その際、休職とパワハラに関する相談とは別の話であり一緒にはできないことを伝えてもらい、パワハラ調査を依頼するのであれば、改めてその依頼をする様伝えたところ、そうしたいとの申出がなされた(証拠もあると主張していた様子)。そして、当該労働者より、メールの印刷物が提示された(内容は文章の羅列であったため、どの点がパワハラであったのかを確認ができていない。)ため、会社担当者より、ハラスメント調査依頼書を交付し、それを会社に提出すると共に、本来休職期間中の者には行わないが、労働者がそれを希望するのであればヒアリングを行うことも検討するので、改めてその旨とヒアリング実施日の決定、証拠関係の提示を依頼した。
⑩2024年2月8日、当該労働者より労災申請の書類が郵送された。その書式の事故態様欄には『上司等からの度重なる嫌がらせにより、再度適応障害を発症した。令和6年1月18日以前より通院しているメンタルクリニックにて診断書を受け令和6年1月19日に提出した。ハラスメント窓口に相談をいたしましたが、適切なる対応や合理性のある対応がなく今回の申請といたしました。』と記載されていた。
⑪⑩を受け、会社は、当該労働者に対する対応の方向性として、⑴一旦退職の提案を行う、拒否された場合は、⑵労災申請に協力する(ただし事故態様等は認めず会社の意見を別途行う)or ⑶労災申請の協力は一端行わない、という対応を決め、2月15日に退職に関する提案を実施した。しかし、当該労働者は一切を拒絶した。

以上が背景となります。

当該労働者の主張や労災申請書に記載された内容は、あまりにも自己中心的で自分が納得しないことは認めない、という様な状態であると推測され、また、会社担当者に確認したところ、当該労働者は、何故譴責処分を受けたのか、その点からして納得していないようであることがわかり、また、生活も金銭的に若干苦しいことが窺えたので、一回、退職提案を実施した次第です。

しかし、これを拒絶されたため、次に対応として考えるところ、労災申請の対応をすべきか否か、となりますが、通常、今後更に紛争が激化することを回避するために、⑵労災申請に協力する(ただし事故態様等は認めず会社の意見を別途行う)、という選択をすることが多いのですが、今回については、余りにも自己中心的と考えるところ、一端、事実関係に関する見解の相違があまりにも大きすぎるとして、協力を拒否することも考えた次第です。

◯菰田弁護士の回答

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