退職する従業員が退職合意書への追記を求めてきたが、応じるべきか

◯事案の概要

会社と揉めた結果、自己都合退職する事になった社員が、退職合意書の「在籍中に従事した業務において知り得た秘密情報について、退職後にも他に開示・漏洩したり、自ら使用しないことを誓約する」という条項について、「犯罪行為については適用しない」的な文言を入れてほしいと言って署名を拒否している

◯相談内容

会社と揉めた結果、自己都合退職する事になった社員(Mさん)がいます。退職届も受理しています。揉めた原因を簡単にまとめると、従業員が会社の苦労を理解せず、売上がやっと増えてきたタイミングで、過剰な要求をしてきたことにあります。

とはいえ、長年の功労もあるし、クレーマー体質という事もあり「いくらかの退職金を支払おう」と考えました。何もしてあげないと、おそらく色んな所で医院の悪評を言う可能性が高いためです。

その意味で、「退職合意書」を作成しました。

退職合意書を院長がMさんに提示したところ、「在籍中に従事した業務において知り得た秘密情報について、退職後にも他に開示・漏洩したり、自ら使用しないことを誓約する」という条項について、「犯罪行為については適用しない」的な文言を入れてほしいと言って署名を拒否しているそうです。

おそらく退職金を上げるための交渉ではないかと考えているようですが、私の見解は、下記2つのどちらかだと考えています。

①文言追記はナシ、署名押印しないなら退職金は支払えない
②文言追記はナシ、退職金にボーナス分として上乗せする
③文言追記はナシ、おそらく退職金が不服だと思うので、プラスいくら欲しいのか、またその根拠は何なのかを本人に提示させる

このどれかを院長に選んでいただき、Mさんに話していただくべきではないかと考えています。

根拠としては、文言追記をしないことついて、まず、第4条では「犯罪行為を漏洩しない」とは書いていませんし、文言追記しなくても、本当に犯罪行為があったのなら言えばいいからです。仮に、逆に「犯罪行為についても漏洩してはいけない」ような契約は、不法行為に基づく契約として無効だとも言えるからです。

また、「ただし、犯罪行為については適用しない」と書くと、まるで「当院は犯罪行為をしています」という風にも聞こえます。もともと犯罪行為がなくても、この文言があることで無駄なリスクが発生します。

金額については交渉の余地があるかもしれませんが、社長とMさんのやり取りや温度感が分からない点があるので、3つ選択肢を考えました。

◯菰田弁護士の回答

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