正社員を取締役にしたいが、責任が重いと断られている

◯事案の概要

正社員を取締役にしたいが、責任が重いと断られている。やるべきことをやり、その証拠を残しておけば、後で不要な責任を負うことはないのではないか

◯相談内容

取締役の責任について教えてください。

クライアントの経営者が「ベテラン正社員の1人を取締役にしたい」と考えているのですが、本人が嫌がっています。

経営者としては、優秀な人だし、ずっと会社にいてほしいという前向きな意味で取締役就任を提示しました。役員報酬も従業員時代とほとんど変わりません。むしろ、残業時間に影響されないので月の報酬としては安定します。

社会保険も当然加入したままなので、実質的な待遇面は従来から劣るわけではありません。取締役になった後の役割は、取締役会(経営会議)への参加です。あとは、従来の仕事をこれまで通りやってもらうつもりです。

「会社が倒産 = 失業 」というリスクは取締役でも従業員でも変わりませんし、失業保険の対象にはならないという違いはありますが。ただ、本人は、責任が重そうだから嫌だと言っているそうです。

取締役の責任について調べたのですが、

会社法423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

とあり、さらに調べると、「任務を怠った時」の具体例は、①経営判断原則違反、②具体的な法理に違反する行為、③監視・監督義務違反、④内部統制システム構築義務違反などの類型があるとあり、そうでなければ責任を負うことはないと見て取れました。

あとは、その取締役が故意や重過失で不法行為を行って会社や第三者に損害を負わせた場合も責任が生じると思いますが、それは従業員でも同じ事だと思います。

それに、取締役が会社の借入れの保証人(連帯保証人)になっている場合などはリスクがありますが、今回はそうではありません。

・取締役であるが株主ではない(今回はこれ)
・取締役でもあるし、株主でもある

などさまざまなケースがありますが、私は今回のケースでは、ちゃんと仕事をすれば責任を問われることは基本的にないと考えます。心理的に「取締役」という言葉は重たいのかもしれませんが、やるべき事をやり、その証拠を残しておけば、後で不要な責任を負うことはないのかなと。

この考えについて、菰田先生はどう思われますか?

また、菰田先生がクライアントに「ある社員を取締役にしたいが、その社員に取締役の責任についてどう説明したら良いか?」と聞かれたらどう答えますか?

◯菰田弁護士の回答

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