消滅時効の「請求」について
◯事案の概要
口頭のみの請求しかしていない場合、借用証書の期限の利益喪失に関する規定が適用されるのか
◯相談内容
消滅時効の起算点について質問です。
期限の利益喪失の条項の中に「請求」が要件として必要となる場合において、口頭のみの請求(具体的明示はなく、「貸金の分割返済金を払ってほしい」としか言っておらず、相手も曖昧な回答しかしていない)しかしていない場合、借用証書の期限の利益喪失に関する規定が適用され、請求の時から貸金全体に対して消滅時効が進行するのでしょうか?
それとも、原則に戻り各回の弁済期からそれぞれ消滅時効が進行するのでしょうか?
前者だと貸金全体に消滅時効が完成している可能性が高く、後者だと一部消滅時効が完成していないと考えられます。
口頭であっても「請求」であるという考えではありますが、相手方の意思表示があいまいであることと、書面で行ったわけではないので、請求したことの証明がきわめて困難であることを考えると、今回の内容証明による請求を正式な請求と見ることが可能と考えています。
この見解に立つと、現在まで請求していないものと解釈できるので、期限の利益喪失条項は発動されておらず、分割払いのそれぞれの弁済期において、消滅時効が進行すると考えています。
最判昭和42年6月23日の判例(割賦金弁済債務に関する事案)をもとに考えています。
借用証書を見ると、個人間であるにもかかわらず「貴社」など会社の表記が見られます。貸主の話では、貸主が会社を経営していたことがあり、その当時に借用証書が交わされたものであるとおっしゃっていました。
ただ、当事者の整合性の点でこの借用証書の効力について疑問の残るところではあります。