契約上の固定残業代より実際の給与計算では少ない固定残業時間数で運用することの可否について

◯事案の概要

社員が選択するコースごとに固定時間数が分かれて設定されている会社において、固定残業代60時間で設定している中で役職手当及び資格手当(いずれも所定内)がつくと、当然ながら固定残業代の時間数設定が崩れることになる。そこで、役職手当及び資格手当を所定内賃金から除外したいと考えている。

◯相談内容

社員が選択するコースごとに固定時間数が分かれて設定されている会社があり、合意の上でそれに応じた金額が固定残業代として設定されています。

最長は60時間ですが、その中で途中からマネージャーの役職が付く人が何人もおり、就いた場合には役職手当が支給されます。さらに所定の資格取得で資格手当も支給されます。

固定残業代60時間で設定している中で役職手当及び資格手当(いずれも所定内)がつくと、当然ながら固定残業代の時間数設定が崩れることになります。

社員説明同様に、固定残業時間数を60時間よりも多くも少なくもしたくないため、役職手当及び資格手当を所定内賃金から除外したいのが顧客の要望です。

①役職手当も資格手当も通常の時間外労働に対する固定残業代としつつ、固定残業代と残業代の差額計算のラインは、これまでの固定残業時間数60時間とする。

②役職手当も資格手当も通常の時間外労働に対する固定残業代としてそのまま差額を計算する。(固定残業時間数80時間を超えるような人も出てくるし、社員説明と変わるのでできれば避けたい)

③いずれも深夜割増限定の固定残業代とする。

①は、実際の固定残業代と異なるので所定内を外す意図が恣意的すぎるかと思っています。つまり当然、実態が所定内であると主張されるリスクがあるかと思っています。

②は、固定残業時間数が限度時間を超えるような時間数相当額であることで、全部否定される可能性が生じているのではないか、また、会社としても会社制度と異なるので避けたいところです。

③は、深夜割増時間数からすると、何百時間の深夜割増になるので実質超えることがあり得ない制度になることから、裁判例にもあるように否定される可能性が高いと思います。

いずれもノーリスクが難しいので、リスクを理解を得た上で進めていますが、その中で一番抗弁しやすい選択をしたいと思っております。

◯菰田弁護士の回答

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