労働条件通知書の誤った記載に基づいて被用者側から残業代を請求されている

◯事案の概要

労働条件通知書の誤った記載に基づいて被用者側から残業代を請求されている

◯相談内容

ある法人の代表に残業代を求める通知書が届きました。あっせんや労働審判や裁判になりそうな感じです。そこで気がかりなことに関してご質問させていただきます。

①労働条件通知書の誤った記載に基づく被用者側からの残業代請求について
 
ある講師(甲とする)が講師を辞めることになりました。
2年以上前に、甲に労働条件通知書(法定だけでなく所定にも誤って25%と入力)を交付していました。その他、所定時間外労働の有無につき有りであったのになしとしています。

それを根拠に、残業代請求で所定労働時間にも割増の25%で2年分の残業代を請求されました。塾側は労働条件通知書の訂正ができず、所定にも割り増し分を加算されて支払わなければならないのでしょうか?

なお、就業規則と就業規則に記載していた賃金規定を2年前くらいから作成はしており、備え付けの電子機器で見ることが可能な状態でした。賃金規定では「8時間超の場合、割増賃金を払う」と規定を設けていました。相手方は就業規則の存在は把握していたものの、賃金規定の存在は把握していません。

私の見解では、支払う必要がないと考えます。
2年以上前の塾の講師の方の賃金の計算にしてもそうですし、現在も他の職員にも、所定労働時間越えで法定以内の場合は割増賃金を支払う運用をしておりません。また、賃金規定で「8時間超の場合割増賃金を払う」と規定を設けているからです。

また、相手の講師が就業規則や賃金規定の周知義務を怠っていたと主張しますが、就業規則の条項には「賃金規定による」との規定もあります。そのため、賃金規定の存在を知ることは十分可能だと考えるからです。

ただ、周知義務の履行が十分とは言えないと判断されて、その分の責任を受ける可能性があるかもしれません。

②甲のタイムカードの記録が誤りだとの主張について

甲のタイムカード打刻忘れや機械の故障、研修や営業で外出したことで、タイムカードの打刻ができない日が多くありました。記録が残っている日以外は、開始時刻と終業時刻は定刻通りとして処理しています。

なお、タイムカードの打刻は講師本人しかできないことになっています。タイムカードの記載が不正確なことについて複数指摘があり、塾側に対して責任を取れと甲が主張してきています。

塾側はどの程度法的責任を負わねばならないのでしょうか?タイムカードの記載が違うことについての証明責任は甲かと思いますが。

甲が打刻できたにも関わらず打刻しなかったなら、事業主の帰責性はさほどないような気もするのですが、労働者重視から厳しく管理する義務を負わねばならない感じもします。

③休憩時間について

2年間、甲は休憩時間を一切与えられていないと主張しています。タイムカード上記載がほとんどなかったからです。

甲は責任者だったため、裁量をほとんど与えていたようです。一方で、事業主は教室に来ないことも度々ありました。休憩して下さいとの指示はしていないようですが、休憩を禁止する言動もしていなかったようです。

甲は煙草をすったり昼ご飯を食べたりしていたようですが、休憩時間を与えてなかったとの認定になり、これも労働時間として扱われることになるのでしょうか?

④残業代からの控除について

事業主は給与以外に、甲の賃貸の住居手当半分と甲のパートナーの塾代をほとんど免除しています。また、甲のセミナーの参加費用も肩代わりし、交通費も支給しています。食事代も度々ご馳走しているようです。

これについて、残業代の総額から控除することは難しいでしょうか?
労働者の権利保護の要請は分かりますが、労働条件通知書にもないものについて塾がお金を出しているのに、塾側があまりに気の毒な感じがしています。

⑤あっせんや労働審判対策について

私はこれらについて経験がないため、参考になる書籍や実体験でのアドバイスをいただけますと幸いです。

◯菰田弁護士の回答

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