全体の雇用期間が1年に満たない労働契約の雇止めと解雇権乱用法理
◯事案の概要
労災休職が半年続いている有期契約労働者がいるが、労災休職中に労働契約書の更新をおこなっていなかった。会社が廃業することになったため、本人に説明し、雇止めまたは期間満了にて更新しない旨を伝えたが、「自動継続された反復契約となるので、期間の定めがない契約となる」との反論があった。
◯相談内容
有期契約労働者との労働契約書締結漏れについて
入社後3ヶ月の時点で事故のため休職し、それから半年が経っている労働者(3か月ごとの有期契約労働者)がいます。
この社員について、労災休職中に労働契約書の更新をおこなっていませんでした。会社側の言い分としては、休職中で連絡が取れなかったため、復職後に結ぼうと思っていたとのことです。
この会社が今回廃業することとなりました。従業員は新しく事業を開始する新会社で採用を進めているため、解雇ではなく退職扱いとしています。新会社では、事務員も含め、ほぼすべての従業員を採用する予定です。
今回、会社が廃業することを本人に説明し、雇止めまたは期間満了にて更新しない旨を伝えたところ、後日以下の内容について反論がありました。
- 何度も同じ内容の労働契約を更新していること、労働契約の更新を忘れて契約したことにしていることにより、自動継続された反復契約となるので、期間の定めがない契約となる
- そのため、雇止めや期間満了は受け入れられない
この場合は解雇になると思いますが、会社からは「労災休職中のため労基法上解雇が禁止されるため会社を廃業できないことになるのか」との相談がありました。
解雇について管轄の労働基準監督署に相談したところ、第19条の「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」にあたるので問題ない。ただし、一応、解雇予告除外申請をおこなうようにとの助言をされました。
そのため最悪はこの方法で進めてしまうつもりですが、気になっているのは、本人が主張している「自動継続された反復契約となるので、期間の定めがない契約となる。」ということです。労働契約書の更新条項は「有」で、会社としても基本的には同条件で他のパートも含めて更新をしてきた実績があります。
などの判例を自分に都合よく解釈しているだけのように感じていますが、仮に有期契約を複数回締結しているというだけで、全体の雇用期間が1年に満たない労働契約の雇止めをするのに解雇権乱用法理が適用される余地があるのでしょうか?
私としては以下のように考えて問題がないと思っております。
有期労働契約を複数回結んでいたとしても、実際は1年未満の勤務者である
労働契約書の更新が漏れているといっても最後の1回分のみ
期間を定めた契約のため、雇止めの基準は正社員の解雇法理と差が出ても問題ない