本人の同意なしの雇用契約書の改訂にどのように対応すればよいか

◯事案の概要

本人の同意なしの雇用契約書の改訂にどのように対応すればよいか

◯相談内容

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を保有する外国人Xの相談です。
Xの現在の月額給与は100万円、雇用契約は1年更新で、これまでこの会社に数年間勤務しています。

先日の台風21号で輸出前の製品が水没して大きな損害が出たため、社長より給与の変更の連絡がありました。この会社は就業規則はなく、今のところXも同意していません。しかしおそらく同意の有無に関係なくこの給料になると予想されます。

法的には無効だと思われますが、会社の損害についても一定の理解はできます。(厳密には補償体制がしっかりとしていなかったので社長の判断ミスだといえます)Xとしてはどのような対応ができるでしょうか?

Xの今後の対応方法に影響を与える以下の要素もお伝えします。

・現在永住許可申請中である
この永住許可申請は通常の永住申請ではなく、高度専門職であるとみなされる高度人材であることをもっての永住許可申請です。

「永住許可に関するガイドライン(平成29年4月26日改定)」
の2.(7)のイ、即ち「 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること」という「原則10年在留に関する特例」要件を満たしていることに伴う永住許可申請になります。

つまり、収入要件があり、今後1年間今の収入(年収1000万円以上)を維持することが隠れた要件になっている申請です。

そのため、課税対象収入が上記のようになると審査に影響を及ぼす可能性があります。そのためなんとか今の条件を維持したいというのがXの気持ちです。この永住許可申請を私が受任中ですが、すでに申請は受理され審査中です。

・Xと社長の折り合いが良くない
2人の関係性がかなり悪く、顔を合わせると口喧嘩という仲です。そのため、Xは本社とは違う県で仕事をしています。社長からXへの連絡も、内容によっては顧問弁護士から電話やメールが来るという状況です。

そのため今回の件についても冷静な話し合いは難しいだろうと予想しています。

以上のような状況から、Xとしては感情的なやり取りで解雇などになることは避けつつ、一方的な条件変更は受け入れられないというという意思を示したいと考えています。

私の考えは、

  • ひとまずこの条件変更は受け入れられないが仕事は続ける(執務拒否などはしない)ので話し合いをしましょう、という意思をはっきり示す。
  • 永住許可申請の結果が出たタイミングなどで(交渉決裂時には退職してもいいというタイミングで)差額分を請求する

という方法がいいのではないかと考えています。

難しいのは、この雇用条件変更に合理性があるか(どれくらいの被害が出て、会社の経営にどれくらい影響が出ているのか)がXには把握できないということだと思います。

◯菰田弁護士の回答

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