和解条項の「現状有姿」「債権債務がない」「明渡し」の解釈について

◯事案の概要

アパートの大家が入居者を退去させるために本人訴訟を提起した。和解となり入居者は退去したが、ゴミを残置しており、ネット回線もそのままになっている。大家側に有利な対応をしたいと考えているが、和解条項にある「現状有姿」「債権債務がない」「明渡し」についてどのように解釈すればよいか。

◯相談内容

アパートの大家さん(甲)が入居者(乙)を退去させるため、不動産会社の顧問弁護士と相談の上、本人訴訟を提起し、和解となりました。和解条項の「現状有姿」「債権債務がない」「明渡し」をどう解釈するかによりますが、必要な費用を請求ができないかのご相談です。

①乙は意図的にゴミを残したまま退去しました。以下の理由でゴミ処分費用を請求することは可能と考えますが、いかがでしょうか。

和解条項には、「本件建物を現状有姿のまま明け渡すもの」と記載があるが、「現況有姿」とあるのは建物についての話であり、ゴミは建物には含まれない。従って、そのままゴミを残置してよいことにはならない。

同じく「所有権を放棄したものとみなし」「甲において自由処分することに異議はない」との記載は、甲が残置物を処分する権利を有することを規定したものであり、甲が残置物を処分する義務を負うものではない。

清算条項については和解時点での話である。処分費用を甲乙どちらの負担とするか規定していないのは、乙が意図的にゴミを残置することを想定せず、ゴミ処分費用が発生することを想定しなかったためである。

②乙は意図的にインターネット回線を残したまま退去しました。回線はインターネット会社のもので、加入者からの依頼があった場合のみ撤去されます。(大家からの依頼は受け付けていません)以下の理由でインターネット会社に撤去を依頼すること、撤去費用を乙に請求することは可能と考えますが、いかがでしょうか。

・回線はインターネット会社のものであること、室内回線は引きちぎられていて使用困難なことから、造作物には当たらない。

和解条項に「甲において自由処分することに異議はない」とあるので、乙に代わって撤去の依頼ができる。

・費用についてはゴミと同様の考え。

③インターネット回線が撤去されるまでの間、賃料相当損害金を請求することは可能でしょうか。電線の残骸を残したくらいで家賃まで請求するのはやり過ぎとも思いますが、「明け渡しが完了していない」と言えるならば、可能と考えます。また、以下のように考えました。

・インターネット回線はインターネット会社のものであることから、「残置した動産等」には当たらない。
・「残置した動産等」以外のものが残っていれば、明け渡したことにならない。
・「残置した動産等」に当たるとしても、回線撤去工事が完了するまでの間、新しい入居者を住まわせることができない。

◯菰田弁護士の回答

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