法人所有の土地・建物の公売に関する相談

◯事案の概要

法人所有の土地・建物の公売が行われることになったが、根抵当の仮登記が抹消された状態で所有権移転登記ができるか。また、納税資金100万ほどで、市と交渉して公売の中止・延期できる可能性があると顧問弁護士の見解があったが、その中止・延期が意味のある措置といえるのか(そもそも可能なのか)

◯相談内容

法人所有の土地・建物の公売が行われるため、依頼人関係者で落札する方向で対応を検討しています。
・公売決定は市。県税・市税、国税はそれぞれ億単位です。
・上記の参加差押に劣後する根抵当権の仮登記がされています。物件価格から根抵当権への配当は考えられません。

①依頼人関係者が落札にあたって気にされている点が、「根抵当の仮登記が抹消された状態で所有権移転登記ができるのかどうか」です。

私は、市が根抵当の仮登記を抹消したうえで落札者にはキレイな所有権が移転されるという考えでいました。同じ物件から二重に換価代金を徴収できるはずがない、と顧問税理士も同様の見解です。

しかし、依頼者関係者が復数の不動産業者に相談したところ、見解が異なっており「根抵当の仮登記が残る」という考えの業者が多数いたとのこと。そこで、私も不安になり確認のためご相談させて頂いた次第です。

条文を探してみたところ、「国税徴収法121条・124条・125条」(地方税法68条6項で準用)を根拠に、落札者は根抵当の仮登記が抹消されたキレイな所有権の移転登記を受けられると考えています。

ですが、国税徴収法以外に考慮すべき法令が存在するのでは、又は、事実上落札者が被る可能性のある負担が存在しないかなど、結論に自信がもてない状況です。依頼人関係者で落札できた場合は、キレイな所有権の移転登記ができると断言してもよいものでしょうか?

※参考条文
・国税徴収法
(担保権の消滅又は引受け)
第124条 換価財産上の質権、抵当権、先取特権、留置権、担保のための仮登記に係る権利及び担保のための仮登記に基づく本登記(本登録を含む。)でその財産の差押え後にされたものに係る権利は、その買受人が買受代金を納付した時に消滅する。第二十四条(譲渡担保権者の物的納税責任)の規定により譲渡担保財産に対し滞納処分を執行した場合において、滞納者がした再売買の予約の仮登記があるときは、その仮登記により保全される請求権についても、また同様とする。

・地方税法
(法人の道府県民税に係る滞納処分)
第68条
6 前各項に定めるものその他法人の道府県民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例による

②依頼者には別件で民事訴訟を依頼している弁護士がいます。その弁護士いわく、納税資金100万ほどで、市と交渉して公売の中止・延期できる可能性があるとのことです。依頼者はこの提案に従って、市との交渉を依頼してダメだったときに依頼人関係者で落札する方向で動くか、それともいきなり公売落札をするかで迷っていて決断できない状況です。

事業の収益性からは税金を完納することは到底考えられず、通常であれば清算して新会社設立という提案をするところです。しかし、特殊な許可で事業を行っているため、その法人を存続させざるを得ない状態です。

公売の見積価格は約300万ですが、それに満たない金額で中止・延期が決定されることはないのではないかというのが私の考えです。(法的な根拠はありません)仮に納税資金+弁護士費用で公売の中止・延期ができたとしても、滞納税額は増える一方で、後日再び差押がくるのでは意味のない延命ではないかと思えます。

③以上を踏まえて、私の方向性として以下のように考えています。
・依頼人関係者が物件を落札して、賃貸借契約を締結し事業を継続する(下記の新法人に名義を移転する)
・新法人を設立して、現法人の利益を可能な限りゼロにする方向で、事業を組み立てる
・新法人はきちんと申告納税を行い、現法人は申告のみ・納税はしない(滞納は逮捕されないので開き直る)
・新法人への利益移転を否認されないよう実質所得者課税の原則(法人税法11条)、二次納税義務(国税徴収法36条・39条)、詐害行為取消権(民法)、などをよく検討して行う

公売で落札できる前提ですが、このような方向で進めることにリスクはありますでしょうか。また、その他の選択肢はありますでしょうか。

◯菰田弁護士の回答

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