就業規則がない事業所でのパート職員の処分について
◯事案の概要
クリニックの受付のパート職員が患者や院長に対して不適切な対応をとった。本来なら解雇したいが就業規則がないため、今回は始末書を提出させたい
◯相談内容
就業規則を現在作成中の事業所において、クリニックの受付のパート職員が患者に対して感情的で乱暴な態度を取り、注意した院長に対しても逆切れをするという事案がありました。以前にも同じようなことがあったため、院長としてはこのまま辞めてもらいたい気持ちがあります。
現状、就業規則がないため、解雇にすると問題に発展する可能性があることから、今回は始末書を提出させようと考えています。また、始末書の提出を拒否した場合に備えて注意書と指導記録表も整備しようと考えております。
①注意書きには本人の記名押印をもらう予定です。就業規則がないため始末書は拒否されると強制させられないと思いますが、注意書への署名を拒否された場合は、その旨を指導記録表に記載することで客観的な記録にできますか?
(就業規則完成後、再度当該パート社員が問題を起こした場合は、就業規則の普通解雇の条文の「服務規律を違反したにもかかわらず、改心が認められなかったり、繰り返したりして、改善の見込みがないと認められるとき」に該当したとして普通解雇に持ち込みたいと考えています。)
②有期契約の場合は契約満了のタイミングで辞めてもらうこともできると思いますが、更新の手続きを行っておらず黙示の更新があったとみなされている場合は、例えば6か月有期契約の場合はその倍数の期間のタイミングでの契約満了は問題ありますか?(入社12か月目、30か月目など)
◯菰田弁護士の回答
はい、ないよりあった方がいいですね。就業規則が出来上がる前の話だったとしても、会社からの業務指示に従わなかった履歴があるかないかは、後に不当解雇問題などに発展した場合、重要な要素だと思います。ですので、現段階でも可能な限りエビデンスは残しておくべきでしょうね。
-(就業規則完成後、再度当該パート社員が問題を起こした場合は、就業規則の普通解雇の条文の「服務規律を違反したにもかかわらず、改心が認められなかったり、繰り返したりして、改善の見込みがないと認められるとき」に該当したとして普通解雇に持ち込みたいと考えています。)
そう簡単に普通解雇に持ち込めるわけではないので、再度問題を起こした場合の問題状況にもよると思いますが、今回の履歴は残しておいた方が良いでしょう。いずれにしても、今回は就業規則が存在していたとしてもいきなり解雇に持ち込めるような事案ではないと思いますので、法的にリスクのない進め方をするのであればもう少し様子を見ていくしかありません。
②について
はい、有期雇用であれば更新するか否かは会社の判断となりますのでその理解で問題ありません。ただ、更新せずに雇い止めるのであれば、更新しないことが合理的だと思われる理由が必要になってきますので、そこはしっかりと準備されてください。
また、無期転換ルールもありますので、雇用期間が5年以内で雇止めを行うようにされてください。
◯その後の相談内容
ありがとうございます。
一般的に接客業の従事者が客への悪態を繰り返した場合で、不当解雇のリスクが低くなってくる「回数」や、「頻度」で目安や判例等はありますでしょうか?
下記URL等で解雇有効のものを見ましたが、具体的な階数などはなく、「再三」や「繰り返し」などの表現になっております。(配置転換の可否や経営に及ぼす程度も考慮されると思いますが)
https://www.mykomon.biz/kaiko/kaikoriyu/kaikoriyu_noryoku.html
また、不当解雇した場合の損害賠償のリスクは金額としては、給料の6倍程度で伝えておこうと思いますがこの認識で良いでしょうか?(勤務態度や勤続年数等で変わってくると思いますが)
◯菰田弁護士の回答
ですので、本当に何とも言えず、裁判官の感覚としては「もう注意や指導では何も解消することはなく、解雇しか方法がないね」と感じる程度になります。
ですので、同じ状況でも、いかに「もう解雇しか方法がない」と思わせられるか次第になりますので、ストーリーの組み立て方次第でもありますね。
また、不当解雇した場合の損害賠償のリスクは金額としては、給料の6倍程度で伝えておこうと思いますがこの認識で良いでしょうか?
和解の場合の解決金相場としてはその程度だと思います。ただ、不当解雇の場合は解雇が無効になるため、解雇したタイミングから労働審判終結までの給料を全額払わなくてはならないのが筋です。
そのときの状況次第で和解の駆け引きは変わって来ますので、一般的に6カ月前後での和解が多いというだけだということはご留意ください。
◯その後の相談内容
先日ご相談した問題社員の件ですが、社員自身が問題行動を認めず、「そのようなことは言っていない」「そのような態度はとっていない」等、自身の非を認めず、始末書は拒否し反省の意はありません。
今後の問題行動を本人の同意なく録音しておくことについて法的リスクは生じるでしょうか?
また、菰田先生はこのような社員を解雇に持ち込むには通常どのような手法を取られていますか?(現状、問題行動があるたびに始末書の要求や勤務態度の記録を蓄積させるなどを考えています。)
◯菰田弁護士の回答
私は解雇に持ち込むという形は取らないですね。本当に問題がある従業員については仕方ない場合もありますが、経営者が「問題社員」という従業員のたいていは、経営者とのコミュニケーション不足や教育不足です。ですので、その辺を経営者に分かってもらって、しっかり従業員とぶつからせ、教育させるようにします。
このような前向きな方向が難しく、退職しかあり得ない場合は、ハッキリと退職して欲しい旨を伝えて退職勧奨し、合意退職で丸め込みます。もちろん、一定額の解決金は覚悟してもらった上でですが。
今すぐ退職という方向にしないなら、始末書を書かせたり、こまめに戒告などの懲戒処分をしたりもしますね。
