役員報酬のほとんどを賞与にして社会保険料を削減することについて

◯事案の概要

役員報酬のほとんどを賞与にして社会保険料を削減している会社があると聞くが、税務上問題なくても年金事務所の調査で指摘されるケースがあると聞く

◯相談内容

よくある話ですが、実際のところどうなのか知りたくて質問させていただきます。

私のクライアントではありませんが、たとえば、役員報酬50万円✕12回を「役員報酬5万円✕12回+賞与540万円」にして、社会保険料を削減するというような方法をとっている会社がたまにあると聞きます。

正しい手続きをとっていれば税務上は問題がないが、年金事務所の調査で指摘される場合があるという話を耳にしますし、私もそんな気がしています。前に資格取得時訂正をされた経験もありますが、年金事務所の考え方は、「基本的に保険料削減に見えるものは認めない」スタンスだととらえています。

さらにH27年に公表された「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」を見ると、「多額の賞与は、給与扱いになる?(結果、月変や算定基礎届の対象となる?)」という風にも取れます。ただ一方、あるネットの記事では、「あらかじめ年金事務所から調査を受けたときの言い訳を考えておけば問題ない」とも書いていました。

たとえば、銀行からお金を借りるため、月の売上を黒字にしておく必要がある。そのために役員報酬を減らしているが、給料がないと生活できないため、年収はしっかりと確保したい。

そこで、役員賞与という形である月に報酬を支払うことにしている。こうした事情から、役員賞与の支払い時期も期末に合わせているという話をすれば通ると。(ただ、会社からお金を借りると、この言い分も通らないとか)

「法律等で明確に定めがある」のか、「金額による」のか、「そうではないが年金事務所の事例はこうだ」、など、実際はどうなのか、ご存知でしたらご教示願います。

◯菰田弁護士の回答

これは私自身も行なっています。月額役員報酬は標準報酬として算定されており、役員賞与は賞与として算定されています。そして、社会保険料については賞与の上限額が設定されているために、結果として社会保険料が安くなるといつスキームです。

これ自体はすべての報酬に関して、社会保険料の算定基礎に含まれており、年金事務所が賞与の社会保険料に上限を設けているから発生する歪みみたいなものです。ですので、全くグレーなものではなく、私は違法性は全くないと考えていますよ。

実際行っているクライアントでも多数いますが、年金事務所調査で指摘された事はありません。

ただ、支給日や支給額を間違えたりすると、一気に損金計上できなくなってしまいますので、税務上のリスクがあり、注意が必要です。

◯その後の相談内容

返信ありがとうございます。

>年金事務所が賞与の社会保険料に上限を設けているから発生する歪みみたいなものです。

→そうですね、明記されていますから「ルール的に許されている」と受け取れます。

ただ、真面目なタイプの先輩社労士に聞くと、たいていは「勧めない」「やらない」という回答が返ってきます。将来の年金額や傷病手当金等の受取額が減るのと、もし何かあった場合、社労士に責任が問われるから怖いからだと思います。

ただ、各年金事務所によって対応が違い、是正勧告や、さかのぼりで修正されたという話を聞いた記憶があります。さらに、ハローワークによっては、求人を出す際に社会保険料の納付記録を求められる場合もあり、保険料が不当に低いと、求人を出せない事もあったそうです。

そういう意味ではグレー(法的にグレーというより、役所の対応がグレー?)という印象が残ります。

追加でいくつか質問させてください。

①「実際行っているクライアントでも多数いますが、年金事務所調査で指摘された事はありません」とのことですが、これは、複数の都道府県でしょうか?先生の事務所がある、東京、福岡以外でもありますか?

②金額設定によってリスクが高い低いはありませんか?役員報酬10万円、賞与1,000万円だと指摘されやすいとか、役員報酬50万円、賞与520万円だと指摘されづらいとか。

③もしクライアントから「社会保険料を抑える事は問題ないか?」と聞かれた場合、

・正しくやれば税法的に違法ではなく、年金事務所の調査でも指摘されない可能性が高いこと
・個人が負担した社会保険料は全額所得控除できるので、その分だけ所得税と住民税の負担が増えること
・将来の年金額や傷病手当金、出産手当金の受取額が減ること
・ハローワーク求人に影響が出る場合があること
・あまり極端な金額設定をすると、日々の生活や資金繰りが難しくなる可能性がある
・事前に決めたタイミング、金額を守らないと損金算入できない

などをお伝えしようと考えていますが、問題なさそうでしょうか?この他に説明しておいたほうがいい事はありますか?(逆に、この説明はいらないとかありますか?)

④菰田先生のスタンスは、

1クライアントから「社会保険料を抑える方法はないか?」聞かれた場合に、今回のやり方をアドバイスする(金額設定は、生活費や資金繰りに影響が出ないようにする)

2聞かれなくても、今回のやり方をアドバイスする

のどちらに近いですか?

◯菰田弁護士の回答

①について

東京・福岡・熊本・鹿児島・茨城・神奈川・岩手ですかね。私の記憶で、事前確定をしていて過去に年金事務所調査があったクライアントはこんなところです。

②について

理論上、関係ないと思います。
私自身は月額10万円にしています。クライアントでは最も安くて5万円ですね。そのくらい月額を安くしないと削減効果はないですからね。

③について

私は事前確定なら問題ない旨を伝えています。もちろん、それに伴う影響は全て伝えた上でですが。ハローワークの件は私は問題ないと思いますし、過去にそのような事例は聞いたことないですね。

日々の生活の件は、役員賞与を支給した口座から生活費用の口座へ12分割して自動送金させています。それなら毎月定期同額で役員報酬が入っているのと同じ状態が作れますので。

④について

事前確定に関しては、私は全く問題ないと考えているので、社保料削減のニーズがあるクライアントにはこちらからお伝えしています。