従業員に借金の有無と犯罪歴の自己申告書を提出させることの違法性について
◯事案の概要
従業員に、現在、消費者金融や住宅ローンなどで借金があるかどうか、また、過去の犯罪歴(刑事罰・行政罰)を自己申告してもらうことの違法性について
◯相談内容
顧問先で、パチンコホールを経営している会社がありますが、フロントに立つ従業員が出玉と交換する特殊景品をくすめていた事実が判明しました。(お客様に渡すべき特殊景品の枚数を少なく渡し、差分の特殊景品を景品交換所で現金にしていたという状況です)
この社員の処分についてはこれから懲罰委員会を開いて処分を決定しますが、会社として再発防止策を講じるにあたって、パチンコホールで特殊景品や出玉などの金品に触れる(携わる)従業員すべてに「誓約書」の提出を求めるほか別途、自己申告書を準備し、この自己申告書の中に
(1)「現在、借金(住宅ローン含む)はあるか否か。あれば借入先といくら位の金額なのか」
(2)「あなたは過去に犯罪歴(刑事罰・行政罰)はありますか?」
を確認できないかと相談を受けた次第です。
私としては、この情報が外部に漏れることがないこと、仮に消費者金融から借入金があったとしてもそれをもって社員に不利益な取り扱いは行わないことを前提に「違法性はなく自己申告させることはOK」との考えです。
ただし、今後採用する社員については面接の段階でこの点を確認し、不採用にする人は出ると考えます。(会社には採用の自由があり、本人は総合的に検討の結果不採用という伝え方をすれば問題なしとの認識です)
※就職差別につながらないように対応をする
根拠として、過去の裁判例で次のことが言われておりました。
「使用者が、雇用契約の締結に先だって、雇用しようとする労働者に対し、その労働力評価に直接かかわる事項ばかりでなく、当該企業あるいは職場への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項についても必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負う」(炭研精工事件・最高裁平成3年9月19日)。
なので、社員は企業から「申告」を求められている以上、正直に申告をしなければならないということが言えるかと考えました。
