海外における労働者の派遣について
◯事案の概要
日本法人(場合によっては新設する法人)として、日本から、日本法人が雇用した日本人従業員を「派遣」の上でA国人向けにサービスを提供しようとしているが、労働者派遣法の許可を取得してまで実施する考えはない
◯相談内容
海外(A国)在住の知人からの求めに応じて、日本法人(場合によっては新設する法人)として、日本から、日本法人が雇用した日本人従業員を「派遣」の上でA国人向けに医療サービスを提供しようとしているクライアントがいます。
法人代表者としては、労働者派遣法の許可の難易度の高さから、上記構想について労働者派遣法の許可を取得してまで実施する考えは今のところありません。
労働者派遣法を見てみますと、事業許可を得ないまま「労働者派遣」を行うことは許容されていないようです。(法第2条の定義、第5条、第23条第4項)
このため、当方としては、労働者派遣法でいう「労働者派遣」(定義:法第2条第1号)に当たらないよう、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に」しながらも、「他人の指揮命令を受け」ないでA国人向けのサービスを行う具体的なプランを示しました。
ところが、ご相談の法人代表者によると、前もって尋ねた弁護士や調べたネット情報では、
①上記プランでは労働者派遣に該当してしまう
②そのため、A国在住の知人の持つA国法人と既設日本法人が共同で日本法人を新たに出資設立した上で、この新設法人からA国法人に「出向」し、相手方の求めに応じてA国人向けのサービスを提供した場合は、資本関係があるなどの理由から、労働者派遣法上の労働者派遣には当たらない
との説明だったとしています。
加えて、法人代表者によると、当方のスキーム案どおりであれば、例えば従業員1人当たり・月当たり、既存の日本法人が20万円受け取り、この日本法人が従業員に給与として10万円を支払った場合、この差額が事実上「派遣に対する手数料」とみられ労働者派遣業に当たる、差額が多いほどなど業法違反の態様が大きくなるなどとの説明を受けられたとのことで、どうしても当方提示のプランを了としていただけませんでした。
さらに、ご相談の法人代表者の検討プランは、知り合いの弁護士もOKしたとのことですが、A国法人の出資を入れる新設法人を含め複数の法人が登場し、金銭のやり取りの少々複雑なようです。
当方としては、複雑してしまうことによる思わぬリスクや、関係者が外国在住・法人ということもあるため、ご相談の法人代表者の管理が及ぶようシンプルな立て付けにする方が良いと考えています。
先ほどご説明したように、①資本関係のあるなしで「労働者派遣」とみられないことがあることや、②送り出し先からの対価と従業員に支払う給与の差額次第では「労働者派遣」に当たることがあるとの見解になじめず、少なくとも当局がそのような解釈をするとも思えません。
労働者派遣法上の「労働者派遣」の定義する態様とならないよう、特に指揮命令に関して疑義を持たれないようにすれば良いと考えておりますが、先生のお考えを是非参考にさせてくださいませんでしょうか。
