士業事務所で雇用した従業員を一般法人の役員にして社会保険を抑えたい
◯事案の概要
士業事務所と一般法人を設立しているクライアントが、士業事務所で正社員を雇い、同時に一般法人の役員にして正社員の社会保険を一般法人で支払いたいと考えている
◯相談内容
もともと個人事業で士業事務所を経営していたクライアントが、士業事務所とは別に法人を設立しました。個人事業の代表者W氏は法人でも代表取締役です。
説明のため、便宜的に個人事業は「W事務所」、法人は「株式会社W」という風にさせていただきます。
W会計は加入義務がないため社会保険には加入していませんが、株式会社Wは、代表取締役は社会保険に加入しています。クライアントはW事務所で正社員を雇いたいと考えていますが、加えて株式会社Wの常勤役員としても登記し、株式会社Wの方で社会保険に加入させたいとのことです。
「個人事業の代表者をやりながら別法人を作り、代表取締役として社会保険に加入する」パターンは士業ではよく見ますが、今回のような「一般正社員(しかも新人)と常勤役員」は初めてです。法的な問題の他にもリスクがある気がしています。
W事務所単体では特に問題はないと考えますが、一番の問題は、そもそも対象者が常勤役員になれるかどうか(法的にも、本人の責任的にも)だと考えます。
常勤役員の定義は解釈が色々分かれているようですが、「常態として業務についていること。4分の3要件など労働時間は特に問われない」という解釈がいけるのであれば、本人が同意し、登記すれば常勤役員として認められると考えます。
ただし、「W会計事務所でどの業務をし、株式会社Wでどの業務をするのか」はきっちり分ける必要があると思います。
「役員報酬が●万円以上でなければ常勤役員として認められない」というルールは無かったはずので、役員報酬の金額が安い事も問題はなさそうです。代表取締役と役員報酬が乖離していると心配ですが、今回はそれもありません。
2ヶ所で労働者だと所定労働時間や時間外労働を考慮する必要がありますがが、法人では労働者ではなく役員なので、そこも心配はありません。
対象者が役員になることに同意さえすれば可能だと思っているのですが、このような考え方で問題ないでしょうか?
ただ、商法254条の3では、取締役に「会社のため忠実にその職務を遂行しなければならない」とする義務を負わせている趣旨の記述もあり、やっぱり常勤取締役としては認められないのではとも考えています。
このやり方の最大のリスクは、年金事務所等の調査の結果、「この人は常勤取締役としては認められない = 社会保険の加入も、さかのぼって取り消し」となることだと思っています。リスクを説明し、最終的にはクライアントに選んでいただくつもりです。
