労働者が勤怠の詐称分の賃金の返還に同意した際の相殺に関する見解について
◯事案の概要
勤怠の詐称があり、懲戒処分(出勤停止7日間)にした労働者が勤怠の詐称分の賃金の返還に同意したため、クライアントに相殺についての見解を示したい
◯相談内容
弊所の顧問先にて勤怠の詐称があり、懲戒処分(出勤停止7日間)にした労働者が勤怠の詐称分の賃金の返還に同意致しました。その際の請求における制限について、ご相談させて頂ければと思います。
顧問先としては、取りはぐれないように賃金との相殺を考えていたところ、労働者としてもそれに同意し、既に書面での締結ができている状況です。上記を踏まえて、弊所としては、以下の見解にて回答しようと考えております。
「まず、賃金については、原則として、全額を支払う必要がございます。例外として、法令による定めがある場合等には、控除することも可能ですが、今回のような勤怠詐称による賃金返還の場合には認められてはおりません。
しかしながら、「使用者が労働者に対して有する債権と労働者の賃金債権とを相殺することについて、労働者が自由な意思に基づいて同意した場合においては、この同意に基づく相殺は全額払い原則に反するものではない」(最二小判昭48.1.19)という判例もございます。
よって、今回の賃金返還の相殺が会社からの要求ではなく、あくまで当該労働者自身の希望によるものであるということであれば、法令に違反するとまでは言えないものと考えられます。
但し、相殺金額についてですが、全額払いの原則の趣旨が労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものであることを鑑み、一気に賃金との相殺をするのではなく、あくまで生活できる水準の金額を踏まえて、それ以下の額を相殺するようにして頂ければと考えます。」
上記の記載に不備等がございましたら、ご指摘頂ければと思います。
