相続人の一人が遺言書に従わず被相続人の預金を自己口座に移動させた

◯事案の概要

公正証書遺言があるにもかかわらず、相続人の一人が遺産分割協議書を他の相続人との協議なく作成し、自分名義の口座に預金を移動させた。行政書士として遺言執行者に就任しているが、どのような対応をとるべきか

◯相談内容

遺言執行について質問させてください。まずは、一般論としての質問です。

①遺言公正証書に遺言執行者の指定文言があり(承諾文言はない)、指定された者が遺言公正証書の証人となっている場合についてです。

相続開始時に遺言執行者に指定された者は、各相続人に対し「遺言執行者への、就任辞退の通知書」を発送できますか?私は、就任辞退はできるものと思っています。

②遺言公正証書の文言に「遺言執行者は、この遺言を執行するために、遺言者の有する不動産の名義変更について、遺言執行に必要な一切の権限を有する」と記載されている場合についてです。
遺言執行者(行政書士)は、単独(受益相続人の代理人としてではなく)で、不動産の名義変更手続きを実行できますか?

ある専門書(著者は弁護士)によると、以下のようにありました。

「遺言書に、受益相続人に相続させる旨の記載がある場合には、当該不動産が被相続人名義である限りは受益相続人が単独で登記申請ができるので、遺言執行者の職務は顕在化せず、遺言執行者は登記手続きをすべき権利も義務も有しない(平成7年・平成11年判決)」

「したがって、当該不動産が被相続人名義である限りは、遺言執行者は登記手続はできず、また、その義務もなく、受益相続人が単独で登記手続を行うことになる」

私としては、遺言公正証書に名義変更に関する権限が記載されているので、遺言執行者(行政書士)が、司法書士に依頼することなく、自分自身の権限として単独で登記申請できるものと思っております(専門書の見解とは異なってきます)

③次に個別ケースの質問です。

  • ・母親甲(父親は既に死亡し、父親の遺産分割は過去に終了している)が死亡し、相続人は長男Aと長女Bの2人
  • ・遺言公正証書の内容:自宅不動産は、長女B(Bは未婚で甲と長年同居していた)に、預貯金は長男Aに四分の一、長女Bに四分の三の割合で相続させる
  • ・死亡日から50日以上経ってから、長女Bより遺言執行者に「母が死亡した」との連絡があり、自宅へ訪問し、長女B及び長女の従兄と面談
  • ・長男Aが、母親の通帳・住民票(除票)・除籍謄本・長女Bの実印等を持ちだしていた。そのうえ、長女Bにこの用紙(恐らく銀行の相続届と思われる)に住所・氏名を記入するよう依頼。長女Bは、何もわからないままに記入した
  • ・長男Aは、銀行に行ってすべて自分名義の通帳に入れてしまったらしい。
  • ・母親の通帳や長女Bの実印は、未だに長男Aからは返してもらっていない。長女Bは長男Aに何も言えない様子で、自分の実印を返すように請求もしていない
  • ・長女Bは、当該銀行に行って、相続開始後2か月間の取引明細の交付を請求。近日中に明細書が届く予定

この場合、遺言執行者以外の相続人が相続財産を処分してしまった事例として、遺言執行者以外の人がした処分はすべて無効となると考えます。

④当該銀行は相続届を適法として処理をしていると思われますが、銀行の責任をどのように考えたらいいのでしょうか。

⑤長男Bに対して、遺言執行者(行政書士)は、預金払い戻し請求訴訟の原告適格を有すると考えますが、自分で訴訟行為をすることができるのでしょうか。あるいは、訴訟するとなった場合は、遺言執行者の権限として、執行行為を専門家に依頼する(訴訟の部分は、弁護士に依頼)ことができますか?

*長男Aが、遺言公正証書の内容(長女Bによると、多分、内容は見ているらしい)をどのように考えているのかは、まだわかりません

◯菰田弁護士の回答

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