部門閉鎖による退職勧奨・整理解雇に関する注意点

◯事案の概要

部門閉鎖に伴って正社員と契約社員に退職勧奨を行う予定にしている。会社としては、退職勧奨の対象者は閉鎖する部門に限らず選定したい。また、退職勧奨に応じない場合は整理解雇に切り替える予定である。このような場合に、何か注意すべき点はあるか

◯相談内容

2部門あるうちの1部門を閉鎖する会社で、退職勧奨・整理解雇の準備を進めています。銀行との間で、一定数の人数の整理解雇または給与見直しによる人件費の抑制を約束させられ、やむなく退職勧奨・整理解雇という流れです。

閉鎖する部門の人員に辞めてもらうのであれば、それほど難易度は高くないと思います。ただ、会社としては、全社的に見て辞めてもらう人員を選定したいという考えがあります。また、契約社員を全員辞めてもらうわけではなく、契約社員の一部と社員の一部に辞めてもらう予定です。

資金的にもかなり厳しく、退職金の大幅な割増は難しい状況です。なお、退職勧奨・整理鑑賞後に正社員の退職金廃止を行う計画のため、まずは第一歩として退職勧奨を行う予定でいます。

会社の将来の見通しが厳しいこと、現状の働きぶりであれば大幅な給与の見直し(減額)をせざるをえないことなどを伝え、退職勧奨に応じてもらうよう話を進める予定です。選定した方々には辞めてもらう選択肢しかなく、退職勧奨に応じてもらえなければ、整理解雇に切り替えて話を進めることになります。

しかし、解雇に相当する明確な懲戒事由や業績評価があるわけではなく、もし訴訟などまでを考えると、選定の正当性が絶対的なものではなく相対的なものであり、想定以上の金額の支払いが生じてしまう事態や長期戦になってしまうこともあり得ると考えています。

そのため、基本的にお願いベースで話を進め、穏便な解決を図りたいと考えています。今までの打ち合わせで、今回案件のリスクの確認、人員の選定の見直し・摺り合わせ、進め方などを行い、合意書などの書類の準備を行っている状況です。

今月の通告を前に、再度、経営者に腹を決めてもらうことが必要と考えています。

今回のご相談では、お気づきの点があればご指摘いただきたいということと、菰田先生でしたらどのようにこの先を進めるかを伺えればと考えています。

◯菰田弁護士の回答

そのような状況であれば、退職勧奨から整理解雇という流れはやむを得ないですね。

整理解雇となる理由は会社の状況で正当化できますから、そこは気にされなくて良いでしょう。あとは、先生のおっしゃるとおり、誰を解雇するかです。確かに、そこを恣意的に決めてしまうと、いくら会社が危うくても不当解雇になってしまうでしょう。そこで、整理解雇の対象者選定の基準を決めなくてはなりません。

一般的によく行われるのは、人事考課制度のように従業員の評価制度を作り、その制度にて各従業員を評価した評点を算出し、その評点が低い順に整理解雇をしていく、そして、必要な人件費カットまで達した時点で整理解雇を終了するという方法です。

最終的には経営者の判断で誰を整理解雇するかを選ぶしかないのでしょうが、それに対して何らか一定の基準を設けてやる必要がありますね。(対裁判所や労基署でも、対従業員でも、基準の有無が大きな分かれ目になると思います。)

◯その後の相談内容

一定の基準ですね。早速作成します。訴訟などにならない限り本人には見せないと思いますので、すごく詳細なものでなくて大丈夫という認識で合ってますか?基準表、合意書、退職金明細を用意します。他に必要な書類があればご指摘ください。

◯菰田弁護士の回答

目的は訴訟や労基署対応などになった場合に整理解雇を有効とするためのものでしょうから、可能な限り詳細であるに越したことないと思います。あとは事案によるので何とも言えませんが、今回お伺いする限りは足りていると思います。

◯その後の相談内容

先日ご相談した退職勧奨を昨日実施いたしました。今回は取締役と所属長の方で面談しました(私は同席していません)。対象者4人のうち、2人はその場で合意しました。
合意しなかった2人のうち1人は途中で体調不良のため面談が中止。週明けに出社しないようであれば、会社の総務から、体調の確認連絡を入れてもらおうと考えています。

もう1人の合意しなかった者は、面談の場で

  • 会社の不満
  • 『不当解雇で労基署に行っていいか』⇒解雇ではなく退職勧奨ですと回答
  • 『退職金が満額なのか?』⇒満額ではないが、会社として払える精一杯の金額

の発言がありました。有給休暇がすでに出ています。ただ、次の面談日を決定はしていません。次の出社日まで20日近くも開いてしまうため、途中で連絡を入れた方がいいかと考えています。

週明けに、同席した所属長から、「先日は急な話で申し訳なかった、あなたのお話を聞きたいと思うが、都合がつきそうなときはあるか?」のように連絡を入れてもらうのがいいかと考えています。

このお二人への休み明けのアプローチについて、菰田先生でしたらどのように考え、行われるのかを伺いたいです。今後の進め方などでも、お気づきの点がございましたら併せてご指摘いただけますと助かります。

◯菰田弁護士の回答

私であれば、とにかく徹底的に謝罪をさせます。

確かに他の従業員と比較したときに、この方々が退職勧奨の対象になったのでしょうが、やはり根本的な問題点は会社の経営不振にあります。ですので、単なるリストラでしかないですから、とにかく謝罪をさせ、退職勧奨に応じてもらうしか方法がないことを切々と伝えます。

それでも応じてくれない場合や、労基署にかけ込まれるような場合は、もはや仕方がありませんので整理解雇の方向に持っていくしかないでしょう。まずは経営がうまくいっていれば辞めてもらう必要のなかった人たちですから、仕事を奪う以上は誠意を伝えるのが最優先事項でしょうね。

ただ、もはや交渉の余地は無いので、選択肢がない事はしっかり伝え、話し合いではなく選択肢のないお願いに持っていってください。

◯その後の相談内容

早々にありがとうございます。

「徹底的な謝罪」で「話し合いではなく選択肢のないお願い」に持っていきます。金額的にもう少し検討の余地がありますので、そこも再考を促し、最大限誠意が伝わるようにします。

①次回まで20日近くは開きすぎと考えますが、どう思われますか?

②また、私は従業員とは面識がなかったため、今回は同席しませんでした。菰田先生はいつも同席されていますか?次回同席した方が効果的かどうかで思案しています。

◯菰田弁護士の回答

①について

目的をどこに設定するかでしょうね。会社経営がおもわしくないため、早急に人件費を減らさなくては経営自体がまずい状況に陥るということなら、スピードを最優先しなくてはなりません。だとすれば20日近く間持ち続けるのは得策ではないでしょう。

しかし、従業員と労使紛争を生じさせないように辞めてもらうということが目的なのであれば、前から有給申請をしている従業員に対して、会社の都合で有給中に話し合いの場を設けさせる事は反発を招くと思います。そうなると20日近く待った方が良いという結論になるでしょう。

②について

会社の担当者次第ですかね。事前ミーティングにおいてちゃんと話し合いの目的を把握し、とるべきスタンスを認識した上で、そのスタンスを貫けるタイプの人であれば同席する必要はないと思います。

むしろ、顧問社労士を出してきたということで、対立構造が出来上がってしまいますので。しかし、それらが的確にできないタイプの人であれば、話し合いをしても元も子もありませんので、やはり同席させてもらいます。

◯その後の相談内容

ありがとうございます。面談の中心の取締役は、打ち合わせでも目的を把握しておりましたし、昨日もスタンスを崩さなかったようです。次回に関しては、対立構造のリスクを伝え、今回のように連絡取れるようにしておくが、控え室に控えるかでお話しします。

◯菰田弁護士の回答

了解いたしました。またクライアントと話しながら、迷う点が出てくれば仰ってください。答えのない事柄ですので、あまり悩み過ぎずに、先生の性格や直感で進められても良いと思いますよ。

◯その後の相談内容

ありがとうございます。

答えのない事柄だけに、「これで良かったのか?」といつも疑問・不安を感じています。

ただ、「精一杯考えたからこれが最善のはず」と自分を信じてクライアントとは話しています。そのような中で菰田先生の意見を聞くと、すごく安心します。これからもよろしくお願いします。

◯その後の相談内容

ご報告です。先日の退職勧奨の件、合意しなかった2人が、本日会社に来て合意したとの連絡がありました。

ともに、本人からの連絡で、条件の上積みもありませんでした。まだ、契約社員の契約満了や、残る従業員の退職金減額交渉などがありますが、まずは一段落です。ご相談に乗っていただき、ありがとうございました。

◯菰田弁護士の回答

良かったですね。

このように何が正解か分からないのが交渉なので、先生の信じるがまま進んでいただき、迷ったときや不安なときはご相談ください。おそらく背中を押すだけにはなるでしょうが、それが大事なときもありますので。