役員退職慰労金制度の規程作成の依頼があった際の税理士との業際について

◯事案の概要

役員退職慰労金制度の規程作成について社労士に業務の依頼があった場合には、「税理士が関与し、金額が決定した後ならばお手伝いができる」と答えているが、業際問題の観点から見るとこの回答で問題はないか

◯相談内容

最近、上記制度規程についての作成のご相談が相次いでいますが、過去、大手税理士法人の依頼により、支給額が決定したものを逆算して作成した事があります。

最近は、金額を設定しても税務署により否認されるという話も聞いたりもします。依頼があった場合、税理士にも入って頂き、金額決定後ならお手伝いできるという言い方をしていますが、これは言い方として間違っているでしょうか。

規程は何でも社労士にというイメージはありがたいのですが、業際問題となりうるのか、越権行為となるのか、難しいところだと感じています。

◯菰田弁護士の回答

役員退職金規定を作成する際に、損金計上できる範囲で役員退職金を支給したいのであれば、どのような算定式でいくらなら税務署に損金算入を否認されないか、税務的な判断が必要になります。そのため、厳密な意味で業際問題を考えると、この税務判断を社労士の先生が行うとなれば、税務相談に該当して税理士法違反になるでしょう。

そのため社労士の先生が退職金規定を作成する際には、算定式をどうするか、最終的にいくら支給し、それが損金算入可能かどうかという点については会社の顧問税理士の判断を仰ぎ、その上で規定を作成すべきです。

顧問税理士の先生としても、顧問先に役員退職金規定があるかどうか、あるとすれば内容がどうなのかは把握しておかないと業務に差し支えますし、アドバイスを求めて嫌がる先生はいないと思います。ですから、先生の方で税理士を用意するという形ではなく、あくまで会社の顧問税理士に相談する方法が良いかと思います。

また、「金額決定後ならお手伝いできる」という言い方をされているとのことですが、言い方として間違ってはおりませんが、この表現だと「先生が税務のことは分からないから、私は税理士が言う通りにしか作りません」という消極的なニュアンスに聴こえてしまいます。

できれば、「私も役員退職金の損金算入について、ある程度の判断はできますが、ここはやはり正面から税務判断となります。だとすれば、私が会社側の希望を伺い、その上で顧問税理士の先生とお話をさせていただいて、最終的に損金算入可能なギリギリのラインを見極めるのがベストだと思います。

顧問税理士の先生と協議させていただいて、大丈夫であればお引き受けさせていただきますよ。」などでしょうか。