就業規則が労働協約に一部反する内容に改定されている

◯事案の概要

50年前に制定された労使協約について、万が一に備えて現状の就業規則を
踏まえた内容に改定して締結し直したほうがいいのか

◯相談内容

関与先に形骸化した労働組合があります。当然、労働協約がありますが、形骸化しており、50年ほど前から改定されていない状態です。また、会社の幹部の方に聞くと、いつから更新していないか、労使双方も定かではありません。組合長は形式だけで組合員も定年を迎えて退職していたり、もしくは定年間近で減少する方向です。

制定当時とは労働市場や経営状況が変わってきているため、当然だとは思いますが、このような状態で、労働協約に一部反する就業規則を改定されています。

①今後万が一組合長になった人が労働協約を締結し、現在の就業規則は労働協約に反すると主張した場合に備えて、今のうちに労働協約を現在の就業規則を踏まえた内容に改定し、締結し直しておいたほうがよいのでしょうか?

就業規則の改定については、組合長に説明して同意を得てから改定をしているようです。ただ、それもここ3年ぐらいのことで、就業規則も当分改定せずに形式化していました。

②仮に50年前の協約の内容を主張されても効力はないということで、会社も組合も、希望がなければそのままにしておいてもよいと私は考えていますが、いかがでしょうか。

◯菰田弁護士の回答

①について
形式的に50年前の労働協約に反するからといって、就業規則が無効化されたりすることはないと思います。結局は、その時問題になった就業規則の条文の内容が、労働組合との兼ね合いでどのような意味を持つことになるかだと思います。

明らかに時代の変化に応じて労働協約も変わっていかなければならないところが、形骸化していたがゆえに改正がなされていないと判断できるのであれば、就業規則には影響しないと思います。
有効期間が1年間の労働協約が、約50年にわたって放置されているという時点で、それはもはや従業員と会社との合意とみなす事は難しいでしょう。

だとすれば、ちゃんと労働協約が改正し続けられていたとすれば、現在どのような内容になっているかという推論を挟みながらの判断になると思います。ですから、不合理な就業規則でなければ大丈夫だと思います。

②について
私も現実的には大丈夫だと思います。ただ、労働協約を改定しないメリットは特にありませんので、改定できるのであれば早めにしておいた方がいいと思います。とはいえ改定しなくともそのデメリットやリスクは相当に小さいでしょうから、正直なところあまり気にしなくて良いのでは、という次元だと思いますね。